2017年6月11日日曜日

進学説明会-Save the World-@東大医科学研究所

先々月のことになりますが、415()に東京大学医科学研究所の大学院進学説明会に参加してきました。参加のきっかけは、後輩が大学院の研究室選びで悩んでいて、その相談に乗っているうちに、自分も大学院進学説明会に興味を持ったので、後輩と一緒に参加しました。医科学研究所には初めて行きましたが、最寄駅が白金台で都会の中心地である割にキャンパス内には自然が多く閑静な雰囲気で、研究に集中できる環境であると思います。
説明会の内容としては、大学の歴史や特徴、各研究室の研究内容についてでした。医科学研究所は、元々は伝染病克服のために創設された、内務省所轄の国立伝染病研究所でした。現在では、強みである感染症に加えて、時代に合わせて、ガンなどの他の疾患にも注力する研究所になっています。特徴としては、附属病院を持つ日本最大規模の医科学の研究所であるようです。
各研究室の研究内容の紹介では、42名の教員が4分ずつプレゼンを行い、計三時間半にも渡りました。優秀な学生を引き寄せるために、どの教員もプレゼンの準備に力を入れていましたので、どの研究室も魅力的な研究内容のプレゼンでした。

そのプレゼンの中で私が特に興味を持った研究室についてご紹介します。その研究室は、Save the World”という大きな目標を掲げている、ウイルス感染分野の河岡教授の研究室です。当研究室では、インフルエンザウイルスとエボラウイルスを研究対象としています。エボラウイルスと言えば、2014年に西アフリカを中心に流行し、発症後致死率50-80%という高病原性を持つウイルスです。その流行まっただ中の2015年2月から8月に、なんと常に当研究室の2人以上の研究者が現地に滞在し、研究を進めていました。患者さんの血液を解析することで、感染して亡くなる人と回復する人の違いを発見しています。


シエラレオネで研究する河岡教授と現地スタッフ
(http://www.natureasia.com/ja-jp/nmicrobiol/interview/6から引用)

 このようなエボラウイルスの基礎研究だけではなく、実際に臨床研究としてワクチンの開発にも携わっています。当研究室の“リバースジェネティクス”という技術を用いてワクチンを開発し、2015年にはワクチンの有効性をサルで証明しています。
 “リバースジェネティクス”とは、簡単に言うと、「ウイルスを産生するオリジナルな遺伝子を細胞に導入してオリジナルなウイルスを産生する技術」です。リバースジェネティクスの大きなメリットとしては、病原性を減弱させることで、高病原性のウイルスでも研究室で容易に扱えるようになるので、ウイルス研究が進むという点があります。
 技術の詳細は当研究室のホームページに分かりやすい解説動画があります。学生さんが体を張ったコミカルな動画で、一見の価値があるかもしれないです。
 あとホームページ先の「新学術領域ネオウイルス学」の活動内容も個人的に気になっています。最近では細菌の中にも善玉菌と呼ばれる体に良い働きを持つ菌があることが知られています。同様にウイルスにも「善玉ウイルス」のように人と共生する等の役割を持つウイルスもあるのではないかという発想で多くの研究室を巻き込んで研究を進めているようです。

リバースジェネティクスの解説動画




ホームページを見ていると、河岡教授の研究室はとても魅力的です。研究室の雰囲気も良さそうですし、ネオウイルス学といった教授の発想は面白いです。特に私が心を惹かれたのは、エボラウイルスの流行中に研究のために自分の身を挺して現地に赴いた点で、“Save the World”で世に貢献しようとする姿勢は、研究者の鑑であると思います。

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