2018年9月30日日曜日

質問回答:米中貿易戦争の製薬業界への影響

先日コメント欄に「米中貿易戦争の製薬業界への影響はいかがなものなのか」という質問を頂きました。一般的な話ではなく、製薬業界特有の影響について回答させて頂きます。


 まず、ジェネリックメーカーにとっては、悪い方向に進んでいる点があります。それは「関税による原価上昇」です。
 中国は医薬品原料の最大輸出国です。ブルームバーグによると、昨年の中国の原薬製造企業による生産量は、世界の生産全体のおよそ4割を占めており、輸出額は290億ドル(約3兆円強)にのぼっています。そして医薬品原料は実際に関税引上げの標的になっています。糖尿病治療で使われるインスリン、抗アレルギー反応薬、ワクチン、血液製剤、抗うつ薬などの原料に25%の関税賦課が実施されることになっています。
安さを追求しなければならないジェネリックメーカーにとっては、25%の関税賦課の影響は大きく、特に中国をサプライチェーンに含む多国籍企業に影響があります。例えば、米国に本拠地を置く、ファイザー社エスタブリッシュ製品部門、マイラン社などは厳しいのではないかと予想されます。(トランプ関税、中国から輸入する薬の主要原料が標的に)

 一方で、新薬メーカーにとっては、良い方向に進んでいる点もあります。それは中国における新薬の「特許期間の延長」と「輸入関税の軽減」です。
アメリカは中国の知的財産権侵害という名目(実際に中国は侵害していますが)で、関税引上げを実施していますので、その名目の正当性を弱めるために、中国は知的財産権の保護強化をアピールしています。具体的に言うと、新薬にとって重要な特許期間を5年間延長して、先進国並みの25年間になっています。
また、貿易戦争の正当性を得るために、中国はむしろ関税の引下げを実施しており、抗がん剤などの28品目の薬品は、最大6%の輸入関税がゼロになっています。

 製薬業界は、景気の波に影響を受けづらいディフェンシブ銘柄ですので、米中貿易戦争の影響は他の業界と比較すると、少なくて済むのではないかと考えています。実際に株価変動を見てみますと、他の業界と比較して、製薬業界の下落率は少なめに上昇率は多めになっていますので、市場も「米中貿易戦争の影響は製薬業界にとっては多くない」と予想しているのではないでしょうか。

 何か製薬業界関連で疑問点等がありましたら、気軽にコメント欄に記入して頂けたら幸いです。時間が許す限り、私なりに調べて考察して、投稿していきたいと考えています。


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