2018年12月30日日曜日

ガイドラインでルール化されたMSL活動


 20194月から「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」が適応されます。本ガイドラインがどのようなものかと簡単に言いますと、医薬品の不適切なプロモーションを適正化するためのものです。プロモーションというと、MRだけが対象になるかと思われますが、実はMSLも対象になります。

 厚労省の考えとして記載されているのは下記の通りです。
「我が国においてMSLは、その位置づけ及び活動が一律に定まっているものではないと考えています。このため、販売情報提供が行われないものとして本ガイドラインの対象から除外することは難しいと考えます。」

 製薬会社の社員が情報提供を実施している時点で、対外的に見て、プロモーションではないと考えるのは難しいです。サラリーマンとして会社に価値を提供せざるを得ない社員が実施する情報提供は、形がどうであれ、一種の“プロモーション”です。私たちMSLがすべき“プロモーション”とは、客観的に見て“科学に基づいた”情報提供を実施することで、医療従事者に医薬品の適正使用を促進することです。
 もともとMSLが急増した背景には、未承認や適応外のオフラベル情報を利用したプロモーションによる副作用問題がありました。その問題により、製薬会社は巨額の損害賠償を支払っています。有名な例ですと、ファイザー社の抗リウマチ薬バルデコキシブでは23億ドル、イーライリリー社の抗精神病薬オランザピンでは14億ドルです。オフラベル情報を“科学的“な視点で“客観的”に提供する必要性が生じたためにMSLは登場しました。
 MSLが登場した背景を考えると、今回のガイドラインで、オフラベル情報の提供に関するルールが明確化されたことは、非常に好ましいことです。治療を必要とする患者さんにとってのメリットになるからです。厚労省によると、さらに詳細なルールを策定する予定があるようです。

【オフラベル情報の提供に関するルール】
 ただし、情報提供に当たっては、次に掲げる条件を全て満たすこと。
  1. 通常の販売情報提供活動とは切り分けること。
  2. 情報提供する内容は、要求内容に沿ったものに限定するとともに、情報提供先は要求者に限定すること。
  3. 医療関係者・患者等から情報提供を求められていないにもかかわらず、求められたかのように装わないこと。
  4. 提供する情報は、虚偽・誇大な内容であってはならず、科学的・客観的根拠に基づき正確なものでなければならないこと。また、情報提供にあたっては、要約、省略、強調等を行わないこと。
  5. 医薬品製造販売業者等による関与があった試験研究の結果やそれに基づく論文等を提供する場合にあっては、当該試験研究が「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年厚生省令第 28 号)若しくは「臨床研究法」(平成 29 年法律第 16 号)又はこれらに相当するものにより適切に管理されたものであること。
  6. 副作用の危険性が高まることや、臨床試験において有意差を証明できなかったこと等、ネガティブな情報についても適切に提供すること。
  7. 情報提供する医療用医薬品の効能・効果、用法・用量等が承認を受けていないことを明確に伝えること。
  8. 経緯、提供先、提供内容等、情報提供に関する記録を作成し、保管すること。

 厚労省から指摘があるように、国内ではMSLは位置付け及び活動が一律に定まっていません。やはり各部署との明確な役割分担を定義しづらく、MSLが何なのかと対外的に回答するのは難しいです。また国内と海外では、MSLが登場した背景が異なり、求められる役割が必ずしも一致しません。なので海外の役割をそのまま国内に適応するのは馴染まないのが問題です。国内MSLが自分たちの役割を発信し続ける必要があるのかもしれません。

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