2017年11月3日金曜日

MSLを取り巻くガイドライン

20171027日に、「MSLに関するガイドライン」を、欧州製薬団体連合会(EFPIA JapanEuropean Federation of Pharmaceutical Industries and Associations)が策定しました。各社ごとに職務が異なるMSL職について、一定の統一基準を設けることで、医療従事者等のステークホルダーにMSL職を理解してもらいやすくすることを目的としています。
統一基準として、本ガイドラインの「MSLを活用する製薬企業の責務」の項目では、下記の四点が挙げられています。
  1. 製薬企業は MSL の役割を明確にしなければならない。
  2. 製薬企業は MSL の資格要件を定めなければならない。
  3. 製薬企業は MSL を自社製品の売上に基づいて評価をしてはならない。
  4. 製薬企業は MSL に対し、継続的教育の機会を提供しなければならない。

 MSL職の役割については、以前は、過去の記事「MSL職とは何か」で書いたように、各社ごとに異なっていましたが、最近では少しずつコンセンサスが得られ始めています(図1)。日本製薬医学会(JAPhMedThe Japanese Association Of Pharmaceutical Medicine)MA部会では、2年ごとに『MSL職に関するアンケート調査』を実施していて、20177月には、第4回目のアンケート調査で、製薬会社31社(内資系19社、外資系12社)から回答を得ています。そのアンケート調査の結果、過半数の企業が回答した業務として、下記の8業務があります。特に「メディカルアドバイザリーボードの立案・実施」と「メディカル戦略の策定」は、MSL職の業務として注目されてきています。メディカルアドバイザリーボードとは、専門分野に従事するステークホルダーから専門的な情報や助言を受けることを目的とした会合のことです。
 図1
AnsersNews「「MSL」じわり存在感 1社平均25人に…業務・評価 模索続く  JAPhMed調査」から引用

 MSL職の資格要件については、本ガイドラインでは、医療従事者と意見交換や情報提供を行うための「相応の知識と能力」に加えて、「医療の一翼を担う者としての倫理観」が必要であるとの記載があります。また、20167月の日本製薬医学会の『MSL提言中間報告』では、「教育機関にて医学・薬学関連の教育を受けた者」「関連する規制や社内標準業務手順書について継続的に教育、訓練を受けている者」「医療従事者と円滑なコミュニケーションをとれる者」との資格要件も記載があります。MSL職の資格要件と必要な能力については、過去の記事で書いていますので、よろしければご覧ください。

 MSL職の評価方法については、売上目標で評価しないという点では各社とも共通していますが、何を以て評価するかは、各社とも試行錯誤段階であると考えられます。日本製薬医学会のアンケート調査によると、内資系企業と外資系企業で評価指標に違いがありますが、どちらも評価指標として主に“回数”を用いています(図2)。評価指標に、単に行動の“回数”だけでなく“質”も含むことで、より医療貢献に繋がると考えらますので、今後は“質”の評価をいかに含めていくかを検討する必要があります。
 図2
 AnsersNews「「MSL」じわり存在感 1社平均25人に業務・評価 模索続く  JAPhMed調査」から引用

継続的教育の機会提供については、MSL職に限った話ではなく、MR職等の他の職業も当然のごとく必要です。現状、MR数が減少傾向にある中で、MSL職は総数も割合も増加傾向で、情報の担い手としてMSL職の存在感が増してきています(図3)。情報の担い手として医療に貢献していくには、その教育機会を活かすことに加えて、自己学習を進めていくことで、個々人の能力を高める必要があります。
図3

AnsersNews「「MSL」じわり存在感 1社平均25人に…業務・評価 模索続く  JAPhMed調査」から引用

少しずつではありますが、MSL職の全体像が見えてきました。今回のガイドラインのように、社外が関わる「社内と社外間」と「社外組織間」でのリエゾン(橋渡し)については、各社で協力して統一のルールを策定した方が良いと考えています。一方で、オフィシャルにはなりにくい「社内部署間」のリエゾンは、会社の競争力の源になり得るので、各社ともに戦略を練らねばいけない領域であると考えています。各社で異なる組織構造を持つので、各社ごとにベストプラクティスがあるはずですし、それを見つけていかねばいけません。幸い、私の部署に優秀な後輩が入ってきています。私たちが会社で何ができるのかを共に考えるのは非常に楽しいことです。



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