“目標株価” 使用のメリットは、個人投資家の株価予想と比較すると、より精度が高いことです。それは、証券会社などの機関投資家では、より多くの情報を持っているからです。今後、個人投資家と機関投資家の情報格差は、今年春から適応の金融商品取引法27条の留意事項「フェア・ディスクロージャー(FD)・ルール」を契機に、広がることが予想されます。というのも、最近の上場企業の動きとして、このFDルールに抵触しない、プロ投資家に標準を絞った、専門性の高い情報発信の機会を増やす動きがあるからです。例えば、大塚ホールディングスでは、四半期ごとに開くアナリストとの個別面談に加えて、新薬候補の開発状況を説明するウェブ会議を開催しています。また、アステラス製薬では、新薬開発状況などを説明する個別面談を国内外で年間400回ほど開いています。このように、製薬業界では、将来の収益の源となる医薬開発品について、積極的に情報発信していくことで、自社への理解を深めてもらい、企業価値に見合った適切な投資を促しています。
“目標株価” 使用のデメリットは、証券会社の数値を鵜呑みにはせずに、批判的に解釈する必要があるということです。“目標株価”は、必ずしも公平中立に数値が設定されているとは限らず、証券会社に利益をもたらす数値が設定されている可能性があります。例えば、証券会社には自己売買部門という自社の資金で株の売買を行う部門があるため、そのポジションから著しく外れる投資判断は難しいと考えられます。ただし、複数の証券会社の“目標株価”を平均化することで、このデメリットは軽減ができます。“目標株価”には、他にもいくつかデメリットがありますので、参考情報として活用するには、数値に「疑いの目を持つ」ことが重要であるかと考えています。
“目標株価”の使用方法についてですが、現在の株価と“目標株価”の差(乖離率)が大きい会社が、『株価上昇が期待できる会社』ではないでしょうか。時価総額が上位12社の製薬会社で、“目標株価”との乖離率を表にまとめました(表1)。“目標株価”は、他の業界も含めて、検索が可能なホームページ(http://www.kabuka.jp.net/)がありますので、参考にして頂ければと思います。
表1. 時価総額上位の製薬会社の“目標株価”と“乖離率”
製薬会社名 | 時価総額 | 現在株価 | 目標株価 | 乖離率(%) | |
1
|
武田薬品工業 | 5兆0632億円 | 6401 | 6508 | 1.67 |
2
|
中外製薬 | 3兆2293億円 | 5770 | 5436 | -5.79 |
3
|
アステラス製薬 | 2兆9728億円 | 1437 | 1521 | 5.85 |
4
|
大塚HD | 2兆7601億円 | 4948 | 5395 | 9.03 |
5
|
第一三共 | 2兆0823億円 | 2937 | 2832 | -3.58 |
6
|
塩野義製薬 | 2兆0067億円 | 6097 | 7404 | 21.44 |
7
|
エーザイ | 1兆9027億円 | 6416 | 6263 | -2.38 |
8
|
小野薬品 | 1兆4268億円 | 2626 | 2871 | 9.33 |
9
|
田辺三菱製薬 | 1兆3092億円 | 2332 | 2405 | 3.13 |
10
|
協和発酵キリン | 1兆2561億円 | 2179 | 2396 | 9.96 |
11
|
参天製薬 | 7198億円 | 1771 | 1899 | 7.23 |
12
|
大日本住友製薬 | 6660億円 | 1674 | 1341 | -19.89 |
※“目標株価”は1年後の予想株価で、証券会社の平均を示している。
※“乖離率”=(“目標株価”ー“現在株価”)/ “現在株価”を用いている。
上記の会社の中でも、乖離率の上位5社を抜き出しました(表2)。塩野義製薬会社が飛び抜けて高い値となっています。
表2. 製薬会社“乖離率”ランキング(上位5社)
表2. 製薬会社“乖離率”ランキング(上位5社)
製薬会社名
|
時価総額
|
現在株価
|
目標株価
|
乖離率(%)
|
|
1
|
塩野義製薬
|
2兆0067億円
|
6097 | 7404 | 21.44 |
2
|
協和発酵キリン
|
1兆2561億円
|
2179 | 2396 | 9.96 |
3
|
小野薬品
|
1兆4268億円
|
2626 | 2871 | 9.33 |
4
|
大塚HD
|
2兆7601億円
|
4948 | 5395 | 9.03 |
5
|
参天製薬
|
7198億円
|
1771 | 1899 | 7.23 |
※“目標株価”は1年後の予想株価で、証券会社の平均を示している。
※“乖離率”=(“目標株価”ー“現在株価”)/ “現在株価”を用いている。
一年後の目標株価を用いて、一年後の予想時価総額ランキングを作成しました(表3)。乖離率が高かった塩野義製薬と大塚製薬は時価総額が大きく伸びています。1位は5兆円台の武田薬品、2-4位は3兆円台のアステラス製薬、中外製薬、大塚ホールディングス、5位は約2.5兆円の塩野義製薬です。塩野義製薬が上位製薬会社を猛追していて、今後に期待ができます。
表3. 一年後の予想時価総額ランキング(目標株価から計算)
製薬会社名 | 予想時価総額 | |
1
|
武田薬品工業 | 5兆1478億円 |
2
|
アステラス製薬
|
3兆1466億円 |
3
|
中外製薬
|
3兆0424億円 |
4
|
大塚HD
|
3兆0095億円 |
5
|
塩野義製薬
|
2兆4369億円 |
6
|
第一三共
|
2兆0079億円 |
7
|
エーザイ
|
1兆8573億円 |
8
|
小野薬品
|
1兆5599億円 |
9
|
協和発酵キリン
|
1兆3812億円 |
10
|
田辺三菱製薬
|
1兆3502億円 |
11
|
参天製薬
|
7719億円 |
12
|
大日本住友製薬
|
5335億円 |
※表作成には2018年1月1日のデータを用いている。
※“予想時価総額”=“目標株価”ד現在発行株数”
私も“目標株価”の指標を利用して、何社かの株を少額で購入しています。購入1年後にどのような結果になっているか楽しみです。また、ブログを書く中で、個人的に興味が沸いたのが、「自分で自社の“目標株価”を計算する。そしてプロの算出法と比較する。」ということで、時間があるときに取り組んでみたいと考えています。
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