2018年2月25日日曜日

日本型企業戦略 -CSV (Creating Shared Value)戦略- ②

CSV時代のイノベーション戦略 「社会課題」から骨太な新事業を産み出す
藤井 剛
ファーストプレス (2014-07-02)
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CSV戦略の基本について記載した日本型企業戦略 -CSV (Creating Shared Value)戦略- ①」からの続きです。


 CSV戦略は、日本企業にこそ合った戦略です。その理由として、以下の3点が挙げられます。

1.日本人が有する高度な社会性
→日本は歴史的に「三方よし」を重んじて「共通善」を軸とした経営を実践している、高度な社会性を有した社会です。

2.日本が直面する世界に先駆けた社会課題
→日本は「課題先進国」と言われるように、高齢化社会やエネルギー問題など、社会課題解決に向けた強力な「実験場」がすぐ目の前にあります。

3.世界的に評価の高い日本企業の高度な技術力
→問題を解決するには、何かしらのイノベーションが必要となります。高度な技術力のある日本ならば、イノベーションを実現することが可能です。

ただし、CSV戦略は日本企業が得意とする面がある一方で、苦手とする面も含まれています。それは、欧米企業が得意とする、したたかな“ルール作り”です。“ルール作り”自体にも、社会貢献という“大義”がありますし、着々と“ルール作り”を仕掛けることで、創り出す新市場における自社の競争力を結果的に確保できます。“ルール作り”で成功するには、広く社会を味方につける社会への発信力と社会との対話力を組織の中に形成していくことが求められます。


CSV戦略は、各方面(個人、民間企業、機関投資家、政府等)から支持を受けて、今後は世界でさらに広がっていくことが考えられます。 内閣府の調査によると、2005年度を境に、個人の利益よりも社会全体の利益が大切だと考える個人が急増し、社会貢献を実施する企業に好感を持つというデータがあります。 民間企業にとっては、先ほど述べたように、CSV戦略が競争力の源となります。 また、企業価値を、環境(E)と社会(S)と企業統治(G)3つの尺度から評価する“ESG投資”が、機関投資家の間で広がっています。すでに、日本国の年金の1兆円ほどが“ESG投資”で運用されています。CSV戦略を推進している企業ならば、環境(E)と社会(S)で好評価を得ることができますので、投資家を惹きつけることができます。 以上のことから、CSV戦略は今後の重要な戦略の一つになっていくことが考えられます。


医療業界の最大の課題と言えば、やはり“医療財政”です。日本の高齢化のスピードを考えると、世界に誇る、日本の保険制度がいつまで維持できるか分かりません。この課題に対して、製薬会社ができる社会貢献は、「できるだけ安く、必要な薬剤を、必要な患者さんに届ける」ことです。
「できるだけ安く」といった意味ならば、確かにオプジーボを筆頭とする抗体医薬は、新しい治療法を提供した点では大きな社会貢献ですが、世間から非難されているように高価格すぎるように思えます。理想なのは、低価格である、低分子医薬や、次期医薬品として期待されている、中分子医薬のペプチド医薬や核酸医薬での創薬です。それは研究部門や開発部門などの腕の見せ所です。
低価格の医薬品で、会社として利益を出すには、原価を下げるしかありません。原価を下げるために、他業界を見習って、生産技術を効率化する必要があります。特に、技術的には課題があるものの、トヨタ式“バッジ生産”を早期に導入すべきだと考えています。導入により、一般的な“バッジ生産”のメリットに加えて、少量生産によって化学反応の効率が上がり、原料が少なくて済みます。それは生産部門の腕の見せ所です。
「必要な薬剤を、必要な患者さんに届ける」といった意味ならば、「新薬を発売後すぐに普及させる」ことが、早く患者さんに届けるという社会的な使命と、その結果、売上が伸びるという、まさにCSV戦略となります。それは営業部門の腕の見せ所です。

 このように、部門に関わらず、CSV戦略は実行可能です。製薬会社の各部門が、「会社の利益、かつ、社会の利益」をもたらす活動を実行できれば、医療業界の未来はより明るいものになるのではないでしょうか。私も私が所属する部門で、何かできないか考えながら、仕事を取り組んでいきます。

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